調子のいい日は、やれる。
でも、調子の悪い日になると、ぱたっと止まる。
そして、止まった自分にがっかりする。
そんなくり返し、ありませんか。
もしあなたが、「やる気のある日」だけがんばって、なかなか積み上がらないなら。
もしあなたが、続けることそのものに、いつも悩んでいるなら。
この記事は、あなたに向けて書いています。
僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。
2026年9月、IRONMANという226キロのレースを完走しました。
今日は、僕の一週間の練習リズムの話です。
先に言っておくと、一週間の予定を組むとき、僕がいちばん最初にカレンダーに置くのは、「休む日」です。
僕は、練習を「今日やる気が出たかどうか」で組み立てません。
一週間という単位で、先にリズムを決めておきます。
理由は、かんたんです。
その日の気分で決めていると、調子のいい日はやりすぎます。調子の悪い日は、まったくやりません。
これでは、体は安定して強くなりません。
それに、僕は「今日はどうしようかな」と考えはじめると、ずるずる迷って、結局動けなくなるタイプです。
やるか、やらないか。何を、どれくらいやるか。
これを毎朝ゼロから決めていると、練習の前に、僕のHPが減ります。
つまり、体を動かす前に、迷うだけで疲れてしまう、ということです。
リズムが先に決まっていれば、「今日はこの曜日だから、これ」と、迷わず動けます。
見えにくい僕にとって、判断は少ないほどいいので、何をやるかを毎回考えなくていいリズムを作ってしまうことが、長く続けるためのいちばんの土台になっています。
トライアスロンは、スイム、バイク、ランの3種目です。
この3つを、一週間の中に、かたよらないように散らします。
同じ種目ばかり続けると、同じ筋肉や関節に負担がかたよります。
でも、種目を変えれば、体の別のところを使いながら、前の日に疲れたところを休ませられます。
たとえば、前の日にしっかり走ったら、次の日は、脚への衝撃が少ないスイムにします。
種目を変えること自体が、ひとつの休ませ方になるわけです。
朝早くに動く日もあります。別の時間帯に、しっかり時間を取る日もあります。
スイムの日、バイクの日、ランの日、そして休む日を、一週間を見わたしながら無理のない順番で並べていくのが僕のやり方で、どれかひとつにかたよらないことだけは、いつも気をつけています。
ここで、ひとつ正しておきたいことがあります。
「見えにくいなら、練習もいつもガイドと一緒ですよね?」
よく、そう聞かれます。
違います。
練習は、基本ひとりです。ガイドとつながるのは、レースの日です。
場所は、慣れたところだけにしています。環境が決まっていると、リズムを保ちやすいからです。
そして、プールは週に3回。こちらは、時間の決まったレッスンで泳いでいます。
この「時間が決まっている枠」が、僕の一週間の柱です。
自分ひとりで決めた予定は、自分の都合で、いくらでも動かせます。
……動かせるというより、気がつくと、くずれています。
でも、時間の決まった枠は、そうはいきません。
だから僕は、まず動かせない枠を一週間の中に置いて、そのまわりに、ひとりでやる練習を並べていくようにしています。
本番の日には、ガイドがとなりにいてくれます。
ひとりで積み上げる時間と、誰かに支えられて進む時間の両方があって、はじめて僕のトライアスロンは成り立っています。
一週間のリズムを組むとき、最初に置くのは、練習の日ではありません。
休む日です。
ふつうは、練習の予定を先に入れて、あまったところで休もう、と考えます。
でも、その順番だと、忙しくなったとき、最初にけずられるのが「休み」になります。
そして、休まずに続けて、いつか体をこわします。
僕は、そうなりたくありません。
長い時間を動き続ける競技では、休むことも、力のうちです。
休む日は、HPを回復する日です。
つまり、練習で疲れた体が、休んでいるあいだに強くなっていく、ということです。
だから、休む日は「何もしない日」ではありません。
休みを「予定があまったら取るもの」にせず、練習と同じくらい大事な予定として最初に置き、そのまわりに練習を組んでいくという順番に変えるだけで、一週間は無理なく回るようになります。
体が軽くて、いくらでもやれそうな日があります。
そういう日こそ、僕は、無理に伸ばさないようにしています。
調子がいいからといって、その日だけ大きくやりすぎると、次の日に疲れが残ります。リズムそのものがくずれます。
1日だけがんばって、次の3日が動けない。
これでは、積み上がりません。
……分かっていても、やりたくなるのですが。
調子のいい日は、決めたリズムを、気持ちよくこなす日です。それで十分です。
「もっとやれたのに」という余力をほんの少しだけ残して終えておくと、その余力が、次の日もすっと動き出すための大事な燃料になってくれます。
逆に、体が重くて、気持ちものらない日もあります。
もちろん、体調が悪いときや、休みが必要なときは、しっかり休みます。
でも、「なんとなく気がのらない」くらいの日なら、量を思いきり減らしてでも、少しだけ体を動かします。
調子の悪い日は、ゲームオーバーではありません。
つまり、いつもの10分の1に減らしてでも続ければ、リズムは切れない、ということです。
一度ゼロにすると、次に動き出すのが、うんと重くなります。
思い出すのは、トライアスロンを始めた31歳の頃です。
25メートルも、泳げませんでした。1キロ走れば、膝が痛くなりました。
大きなことは、何ひとつできませんでした。
それでも、できる範囲のことを少しずつ続けて、ゼロにだけはしなかったその小さな積み重ねが、いつのまにか、僕をIRONMANのスタートラインまで連れてきてくれました。
一週間のリズムを回し続けて、分かったことがあります。
積み上げは、その日の調子に左右されません。
力は、調子のいい日に一気につくものではありません。
いい日も、悪い日も、ふつうの日も、リズムを回し続けた合計として、ついていきます。
「今日は良かった」「今日はダメだった」と毎日採点していると、ダメだった日に、心が折れます。
だから僕は、結果ではなく、行動で見ます。
決めたリズムを、回せたかどうか。
回せていれば、その日は合格です。
タイムなどの結果は、3か月に一度くらい、まとめてふり返れば十分です。
その日の調子は天気のようなもので、晴れの日も雨の日もあるけれど、リズムという傘をさして淡々と歩き続けていれば、歩いた距離だけは、ちゃんと自分の力として残っていきます。
もしあなたが、調子のいい日だけがんばって、なかなか積み上がらずに悩んでいるなら。
その日の気分で決めるのを、いったんやめてみてください。
かわりに、一週間のリズムを、先に決めてしまいます。
毎日を100点にする必要は、ありません。
60点の日も、40点の日も、リズムさえ止めずに回していれば、その点数は、一週間、ひと月という時間の中で、ちゃんと足し算されていきます。
完ぺきな1日をたまに作るよりも、そこそこの1日を止めずに続けるほうが、ずっと遠くまで連れていってくれるということを、アラフィフになった今も挑戦を続けている僕は、自分の体で感じています。
調子のいい日を、待たなくて大丈夫です。
一緒に、止めずに回し続けていきましょう。
「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。
📧 つなひろワールドへお問い合わせ中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。
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25メートルも泳げなかった僕が、ガイドとロープでつながって226kmに挑むまでを、YouTubeで1話ずつ動画にしています。
▶ IRONMANシリーズを第1話から見る(YouTube)
RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人