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📅 2026.05.09(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
💪 挑戦

ランニング後の水分補給|自販機で小銭が足りなかった視覚障害ランナーの、4つの工夫

⏱ 約5分で読めます(3,053字)
ガイドロープで繋がり伴走する中澤隆 ガイドロープで繋がり伴走する中澤隆

走り終わって、のどがカラカラ。やっと自販機の前に着いたのに、小銭が足りない。そんな経験、ありませんか。

もしあなたが、走ったあとの水分補給を、いつも「その場でなんとかなる」ですませているなら。

もしあなたが、疲れているときほど、かんたんなことでつまずいてしまうなら。

もしあなたが、小さな準備をつい後回しにしてしまうなら。

この記事は、あなたに向けて書きました。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害B2クラスのトライアスリートで、盲導犬のシュクレと暮らしています。

2024年9月15日には、IRONMAN(226キロ)を13時間14分17秒で完走しました。

でも今日は、そんな大きな話ではありません。自販機の前で立ちつくした、小さな失敗の話です。

📖 この記事の目次
  1. 自販機の前で、小銭が足りない
  2. なぜ、小銭が足りなくなるのか
  3. 工夫1|500円玉を2枚、いつも入れておく
  4. 工夫2|電子マネーが使える自販機を、先に調べる
  5. 工夫3|コンビニの場所を覚えておく
  6. 工夫4|最初から、水を背負って走る
  7. ルールを決めたら、走ったあとが変わった
  8. 次に走る前の、あなたへ

自販機の前で、小銭が足りない

ある晴れた日曜日のことです。

自宅の近くで、20キロのロング走を終えました。

のどが、カラカラです。

20キロを走り終えた僕のHPは、ほぼ0でした。

つまり、とにかく今すぐ何か飲まないと、もう動けない状態だった、ということです。

近くの自販機へ向かいました。財布を開けました。

小銭が、ない。

正確には、100円玉が1枚だけ。飲みたいスポーツドリンクは、160円です。

千円札なら、何枚も入っていました。

でも、この自販機は、電子マネーが使えない。

……226キロは完走できるのに、あと60円が出せません。

結局その日は、自販機をあきらめて、コンビニまで歩きました。

たった300メートルです。でも、のどがかわききった体で歩く300メートルは、さっきまで走っていた20キロよりも、ずっとずっと長く感じました。

「これは、ちゃんと対策しないとまずいな」

そう思いました。


なぜ、小銭が足りなくなるのか

考えてみると、これは走る人によくある話です。

僕の場合は、ここにもうひとつ加わります。

硬貨を見分けるのに、時間がかかるんです。

目で見て数えるのではなく、指でさわって、大きさや形で確かめていくからです。

100円玉と500円玉は、大きさで分かります。

でも、10円と50円。1円と5円。これは、けっこう迷います。

走ったあとは、指先の感覚もにぶっています。まちがいも増えます。

暑さと疲れで頭が回らないなか、指先だけで小銭を1枚ずつ確かめながら自販機の前に立っている時間は、思っていたよりずっと、気持ちがすり減るものでした。

だから、決めました。その場で考えなくていいように、先にルールを作っておく。

ここからが、僕の4つの工夫です。


工夫1|500円玉を2枚、いつも入れておく

ランニングポーチに、500円玉を2枚。これを、いつも入れています。

なぜ500円玉なのか。理由は2つです。

100円玉だと、枚数が増えます。音も鳴ります。見分けるのも面倒です。

500円玉が2枚なら、最大で1000円分の飲み物が買えます。

走る前に、ポーチをさわって確かめる。やることは、それだけです。

……それだけのことを、あの日の僕はやっていませんでした。

たった2枚の硬貨がポーチの底に入っているのを指で確かめてから走り出すようになって、「買えなかったらどうしよう」という小さな心配を、走っている間じゅう持たずにすむようになりました。


工夫2|電子マネーが使える自販機を、先に調べる

今は、地図アプリで、電子マネーが使える自販機を探せます。

僕は、練習コースの途中にある自販機を調べて、スマホのメモに記録しています。

「何キロのあたりに、使える自販機がある」。そういうメモです。

見えにくいと、知らない場所でいきなり自販機を探すのは、むずかしい。

だから、これは僕にとってのセーブです。

つまり、「ここまで来れば必ず飲める」という場所を、先に作っておく、ということです。

疲れてから探すのと、どこにあるかを知ったうえで走り出すのとでは、同じ道を走っていても、気持ちの軽さがまるで違います。


工夫3|コンビニの場所を覚えておく

コンビニは、僕にとって、いちばん頼れる補給の場所です。

電子マネーが使える。トイレがある。店員さんに助けを求められる。

僕は、練習コースにあるコンビニの場所を、「何キロ地点にある」という形で頭に入れています。

シュクレも、よく行くコンビニは覚えています。

「シュクレ、セブン!」と言えば、連れていってくれます。

……連れていってくれる、こともあります。

自販機がだめでも、あそこまで行けば水もトイレも人の手もある、と分かっている場所がコースの上にひとつあるだけで、長い距離を走るときの心細さは、ずいぶん小さくなります。


工夫4|最初から、水を背負って走る

長い距離、20キロ以上を走るときは、最初から水を背負います。

ハイドレーションパックという、背負える給水バッグです。

自販機に頼らなければ、小銭の問題は起きません。

単純ですが、これがいちばん確実です。

ただ、弱点もあります。

夏は、重い。冬は、中の水が凍ることがある。

……万能の道具は、なかなかありません。

だから、季節と距離で使い分けています。

どれかひとつに決めてしまうのではなく、小銭と、自販機のメモと、コンビニと、背負う水とを、その日の距離と季節に合わせて組み合わせておくのが、今の僕のやり方です。


ルールを決めたら、走ったあとが変わった

この4つを決めてから、走ったあとの体の戻りが、明らかに早くなりました。

理由は単純です。

確実に飲めるから、水分が足りない状態にならない。

前の僕は、「自販機で買えなかったら、あきらめよう」と、どこかで思っていました。

だから、飲むのが遅れることが多かった。

次の日に疲れが残る。練習の回数が落ちる。そのくり返しでした。

「500円玉を2枚」と決めてから、その心配がなくなりました。

走り終わって30分以内に、水分とミネラルをとれる。これが、回復のいちばんの近道でした。

つまり、特別なことをするより、走った直後にちゃんと飲むほうが、次の日の体が楽になる、ということです。

たかが小銭、されど小銭で、ポーチの中の硬貨2枚という小さな習慣が、226キロという長いレースに向かう毎日の練習を、足もとから支えてくれています。


次に走る前の、あなたへ

もしあなたが、走ったあとの補給を「その場でなんとか」にしているなら。

一度、ルールを決めてみてください。

どれでも、いいんです。

大事なのは、「飲めない」という場面を、先になくしておくことです。

疲れると判断がにぶるのは、見えていても、見えていなくても、同じです。

先に決めておけば、迷わない。迷わなければ、確実に飲める。確実に飲めれば、体の戻りが早くなる。

単純ですが、これが、長く走り続けるためのコツだと思っています。

あの日、自販機の前で60円が足りなくて立ちつくした僕が学んだのは、準備というのは、疲れきった未来の自分を、元気なうちの自分が助けておくことなのだ、ということでした。

次に走る前に、ポーチの中をさわってみてください。

500円玉が2枚。それだけで、走り終わったあとの安心が、まるで違います。

最後まで読んでくれて、ありがとうございました。


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