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📅 2026.06.02(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
🎤 講演

何をやっても続かなかった、昔の僕へ|足りなかったのは根性じゃなく「1ミリの順番」だった

⏱ 約7分で読めます(4,367字)
ジムで筋力トレーニングする中澤隆

何をやっても続かなかった、子どもの頃の僕へ。今の僕から、手紙を書きます。

もしあなたが、三日坊主を何度もくり返して、「自分はダメだ」と思っているなら。

もしあなたが、「今日くらい休んでもいいか」という声に、いつもうなずいてしまうなら。

もしあなたが、続けられる人は意志が強い人だ、と思っているなら。

これは、昔の自分に向けた手紙で、そして今、続けられずに自分を責めているあなたに向けた手紙でもあります。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。

2026年9月13日、IRONMAN JAPANを完走しました。タイムは14時間43分54秒です。

でも、昔の僕は、何を始めても、ずっとレベル1のままでした。

つまり、少しうまくなる前に、いつもやめていた、ということです。

📖 この記事の目次
  1. 何をやっても、続かなかった
  2. やる前に、逃げていた
  3. 続けている人も、毎朝「めんどくさい」と思っている
  4. 気合いじゃなく、工夫。順番を逆にする
  5. 気合いは、「ここぞ」に取っておく
  6. 1ミリでいい。100点より、30点を毎日
  7. 君は、3年間通いきったことがある
  8. 続けられずに悩んでいる、あなたへ

何をやっても、続かなかった

昔の僕へ。君は、何をやっても続かない子どもだったね。覚えているよ。

小学校の成績は、3段階で、ほとんどが1か2。3は、めったに見なかった。

運動会の徒競走は、ビリか、ビリから2番目。

スタートラインに立った時点で、君のHPは、ほぼ0だった。

つまり、走る前から、もうあきらめていた、ということ。

プールも苦手だった。25メートル。プールの端から端まで。それだけ。

なのに、小学校の6年間、一度も泳ぎきれなかった。1年生のときも。6年生のときも。

……6年間、何をしていたんだろうね。

2つ上のお兄ちゃんは、なんでもできた。勉強も、スポーツも。

「お兄ちゃんは出来杉君だね。弟の隆くんは……のび太君かな」と言われるたびに、君は心のどこかで「うん、そうだよね」とうなずいていた。

中学では、バドミントン部に入ったね。運動部に入れば、変われるかもしれない。そう思って。

変わらなかった。うまくならなかった。1年くらいで「やっぱり運動は向いてない」と思って、辞めた。

ほら、また続かなかった。


やる前に、逃げていた

昔の僕へ。君が逃げていたのは、運動や勉強だけじゃない。自分の気持ちからも、逃げていた。

中学のとき、好きな子がいた。かわいくて、やさしい子だった。

君にとって、告白はラスボスだった。

つまり、いちばんこわくて、いちばん避けたかったこと、ということ。

どうせ相手にされない、と自分で決めつけて、断られるこわさから逃げているうちに、君はその気持ちをひとことも伝えられないまま、中学を卒業した。

挑戦する前に、逃げる。失敗する前に、やめる。これが、あの頃の君のいちばんの弱さだった。

続かない。逃げてばかり。意志が弱い。根性がない。だから、ダメなんだ。

君はいつも、自分にそう言っていたね。


続けている人も、毎朝「めんどくさい」と思っている

昔の僕へ。ひとつだけ、はっきり言わせて。

君が続けられなかったのは、君がダメだったからじゃない。

ただ、「続く仕組み」を知らなかっただけなんだ。

君は、勘違いしていた。続けられる人は、意志が強い人。歯を食いしばって、自分に厳しくできる人。そう思っていた。

違ったよ。続けている人も、毎日「めんどくさいな」と思っている。

僕もだ。4時半から6時のあいだに起きる生活を何年も続けているのに、今でも、ほぼ毎朝思っている。

アイアンマンを完走した人間が、これです。正直、ちょっと情けない。

しかも、その「めんどくさい」の声は、すごく優しい顔でやってくる。

「今日はがんばらなくていいよ」「あなたは十分やってきたじゃない」って。まるで味方みたいに。

鬼みたいに厳しい声なら、「うるさい」と振り払える。でも、優しい声は振り払えない。だって、優しいから。

その声を聞くのは、悪いことじゃない。でも、ひとつだけ気をつけてほしい。

「今日はいいや」が1回入ると、次の日は、もっとやりにくくなる。2日目には「昨日も休んだしな」という言い訳が、もう手元にある。

僕がいちばんこわいのは、続けられないことそのものじゃなくて、「今日はいいや」をくり返すうちに、止まるクセと「自分との約束を、また破った」という気持ちが、ゆっくり大きくなっていくことなんだ。


気合いじゃなく、工夫。順番を逆にする

ここからが、いちばん伝えたいこと。続けるのに必要なのは、気合いじゃない。工夫だ。

「やる気が出たら、やろう」。これだと、いつまでも始まらない。

やる気が全回復するのを待っていたら、一生始まらない。

つまり、やる気は、待っていても戻ってこない、ということ。

だから、順番を逆にする。やる気を待たずに、「行くための動き」だけ、先にやってしまう。

僕は、練習に行きたくない朝、こうしている。

ここまでやると、体が自然に動きだす。「もう着替えちゃったし、行くか」。人間、わりと単純だ。

もし本当に5分でやめた日でも、その日の僕は、動いた側にいる。ゼロと5分のあいだには、5分と1時間のあいだより、ずっと大きな差がある。

入口を低くする工夫は、ほかにもある。

前の晩に、ウェア、靴下、シューズ、水筒を、決まった場所に並べておく。朝の僕は、ただ着るだけ、ただ持つだけ。

見えにくい僕にとって、朝の手探りで「あれはどこだっけ」と探す時間は、それだけで心を削る。探しているあいだに、あの優しい声がまた話しかけてくる。だから、判断は前の晩の元気な僕がすませておく。

それでもダメな日は、誰かの顔を思い浮かべる。伴走ロープでつながってくれるガイドの仲間。応援してくれている妻。講演で出会った生徒さんたち。

昔の僕。君は意志が弱かったんじゃなくて、やる気を待たずに先に動くというこの順番と、「自分のため」だけじゃなく「誰かと約束した自分」になるというこの工夫を、誰にも教わらなかっただけなんだよ。


気合いは、「ここぞ」に取っておく

誤解しないでほしい。気合いが悪者なわけじゃない。使う場所が違うだけなんだ。

気合いは、エネルギーをたくさん食う。「よし、今日もがんばるぞ」と気持ちを奮い立たせるだけで、心の体力が削られていく。

しかも、その日の体調に左右される。調子のいい日は入るけど、悪い日は入らない。それだと、悪い日はぱったり止まってしまう。

僕の場合、見えにくい分、外を歩くだけ、人と話すだけでも、神経をたくさん使う。そこへ毎朝、気合いまでチャージしていたら、昼前にはもう動けない。

だから僕は、気合いを「ここぞ」の瞬間だけに使う。レースの最後の1キロ。講演の登壇の直前。

それ以外の毎日は、1ミリで淡々と回す。靴下をはくのに、気合いはいらない。

毎日を1ミリで回しているからこそ、本番の最後の1キロで、ためておいた気合いをぜんぶ出しきれる。同じ気合いでも、使いどころで結果がまるで変わるんだ。


1ミリでいい。100点より、30点を毎日

昔の僕へ。いちばん伝えたい言葉がある。

「めんどくさいと思うときは、まず1ミリの行動」

今の僕が、いちばん大事にしている合言葉だ。

1ミリでいい。ウェアを着るだけ。机の前に座るだけ。本を1ページ開くだけ。

続けるって、たくさん進むことじゃない。止まらないことなんだ。1ミリでも動けば、止まっていない。止まらなければ、止まるクセは育たない。

意外かもしれないけど、止まるクセの入口は、なまけ心じゃない。「やるなら、ちゃんとやらなきゃ」という気持ちのほうが、ずっと危ない。

「ちゃんと」できない日は、まるごとやらなくなるから。100点か、ゼロか。その二択だと、調子の悪い日は、全部ゼロのほうへ転がっていく。

だから僕は、100点を月に3回出すより、30点を毎日出しつづけるほうを選ぶ。中途半端でいい。むしろ、中途半端を毎日続ける。

それから、ひとつ知らせておくね。

のび太君と呼ばれて、徒競走はビリか、ビリから2番目で、25メートルも泳げなかった君が、ずっとあとになって、目があまり見えなくなった体で、ガイドさんと一緒に、226キロを止まらずに最後まで進みきる日が来るんだ。

スイム3.8キロ。バイク180キロ。ラン42.195キロ。信じられないよね。僕も昔は、信じられなかった。

でも、226キロを進みきった僕も、中身はレベル1のままだ。

つまり、めんどくさがりで、すぐ休みたくなるところは、昔と何も変わっていない、ということ。

変わったのは、やり方だけ。1ミリずつ、止まらずに進む方法を見つけただけなんだ。


君は、3年間通いきったことがある

昔の僕へ。最後に、これだけは伝えたい。

君は、工業高校に3年間通った。留年しないで、卒業した。派手なことは、何もない。

でもあの卒業は、君の人生で最初のセーブポイントだった。

つまり、「ここまでは、ちゃんとやれた」と、あとから何度でも思い出せる場所になった、ということ。

あのときの君は気づいていなかったけれど、あの「最後まで通いきった」という小さな経験が、ずっとあとの僕を支えてくれる、いちばん最初の一歩になったんだ。

君は、続けられない人間じゃなかった。続け方を、まだ知らなかっただけ。

その方法、今の僕がちゃんと見つけたよ。


続けられずに悩んでいる、あなたへ

ここまで、昔の僕に書いてきました。でも本当は、今読んでくれているあなたへの手紙でもあります。

続かないのは、あなたがダメだからではありません。「続く仕組み」を、まだ知らないだけです。

続けている人も、みんな「めんどくさい」と思っています。それでも「行くための動き」だけ先にやって、1ミリずつ進んでいるだけです。

だから、気合いはいりません。気合いは、あなたの「ここぞ」の日のために取っておいてください。

そして、できない日があっても、まったく問題ありません。体調が悪い日も、気持ちが乗らない日も、1ミリも動けなかった日も、誰にだってあります。僕にも、あります。

今日サボってしまっても、ゲームオーバーではありません。

つまり、1日休んだくらいで、それまで積み上げてきたものが消えるわけではない、ということです。

大事なのは、途切れたあとに、また戻ってこられるかどうか。次の日にまた靴下をはけば、それでもう、続いています。

止まらなければ大丈夫で、ビリでも、遅くても、途中で何回立ち止まっても、また1ミリ動きだせば、あなたはちゃんと「続けている人」です。

僕がここまで来られたのも、僕の力だけではありません。ガイド、コーチ、家族、応援してくれる人たち、そして盲導犬のシュクレ。みんなに支えられて、1ミリずつ進んできました。

見えなくなっていく世界の中で、支えられながら挑み続ける。その旅を、仲間と一緒に。

あなたの今日の1ミリを、心から応援しています。


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「中途失明」「挑戦」「不安があっても前に進む力」をテーマに、2017年から講演を続け、ここ3〜4年は年間50回前後で登壇しています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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動画でも見られます:IRONMANシリーズ

25メートルも泳げなかった僕が、ガイドとロープでつながって226kmに挑むまでを、YouTubeで1話ずつ動画にしています。

▶ IRONMANシリーズを第1話から見る(YouTube)

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、人生現役で挑み続ける