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📅 2026.05.11(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
💪 挑戦

視覚障害ランナーのランニングシューズの選び方|見た目ではなく、足の裏で選ぶ

⏱ 約6分で読めます(3,356字)
ガイドロープで繋がり伴走する中澤隆

「これ、すごくいいですよ」

そう言われて買ったのに、使ってみたら自分には合わなかった。

そんな買い物、ありませんか。

僕は、ランニングシューズでやりました。

もしあなたが、見えにくさがあって、それでも走っているなら。

もしあなたが、シューズを何で選べばいいのか、迷っているなら。

この記事は、あなたに向けて書いています。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。

31歳のとき、緑内障で見えにくくなりました。

右目は、5円玉の穴からのぞいている感じ。左目は、目の前のグー・チョキ・パーが分かるくらいです。

先に、結論を書きます。

シューズは、見た目ではなく、足の裏で選ぶ。

今日は、その選び方の話です。

📖 この記事の目次
  1. 「めちゃくちゃ軽いですよ」で買って、こわくなった
  2. 見えにくいランナーがぶつかる、3つの壁
  3. 基準①②:地面が分かること、ぐらつかないこと
  4. 基準③④⑤:重さ、長持ち、かかとのフィット
  5. ネットで買って失敗し、店で伝えてうまくいった
  6. 店での頼み方と、試しばきの確かめ方
  7. シューズと同じくらい大事な、走る場所
  8. 見えにくくても、走りたいあなたへ

「めちゃくちゃ軽いですよ」で買って、こわくなった

まず、失敗の話からします。

あるとき、店員さんにすすめられました。

「このシューズ、めちゃくちゃ軽いですよ!」

軽い。速そう。買いました。

……単純です。

結果は、こうです。

走りはじめて10分で、僕のHPは一気に減りました。

つまり、足元がふわふわして、こわくて、走るどころではなくなった、ということです。

軽いシューズが悪いわけではありません。

ただ、足元を目で確かめられない僕にとっては、軽さよりも、着地したときにぐらつかないことのほうがずっと大事なのだと、あの10分で、体で思い知りました。


見えにくいランナーがぶつかる、3つの壁

シューズ選びで、僕がぶつかる壁は、3つあります。

1つめ。見た目で判断できない。

店にならんだシューズを、見くらべることができません。色、形、ロゴ。見える人が何気なく使っている情報が、僕には届きません。

シューズ売り場に立った僕は、いつもレベル1です。

つまり、どれがどんな靴なのか、何も分からないところから選びはじめる、ということです。

だから、店員さんに最初に伝えます。

「このシューズの特徴を、言葉で教えてください」

2つめ。試しばきで、感覚に集中する必要がある。

足の裏の感じ。足首の安定。歩いたときの地面の感じ。目のかわりに、そこに神経を集めます。

3つめ。ネットの情報が、「見える前提」で書かれている。

「軽くてスタイリッシュ」「カラーが豊富」

……色が豊富でも、僕には関係ないのです。

僕が本当に知りたいのは、地面をどう感じるか、クッションはどうか、ぐらつかないか、どれくらい長持ちするかという、はいて走ってみないと分からないことばかりです。


基準①②:地面が分かること、ぐらつかないこと

僕がシューズを選ぶときの基準は、5つあります。

まず、いちばん大事な2つです。

基準①:足の裏で、地面が分かるか。

僕は、路面のでこぼこを目で確かめられません。

だから、「今、何を踏んでいるか」を足の裏が教えてくれるシューズが必要です。

僕の場合、底のクッションの部分が25〜30ミリくらいのシューズが、いちばん安心して走れます。

基準②:着地のとき、ぐらつかないか。

疲れてくると、足元はぶれやすくなります。

僕は、目でバランスを取ることができません。だから、シューズそのものに、ある程度の安定が必要です。

試しばきでは、ここを確かめます。

見える人が目で受け取っている路面の情報を、僕は足の裏から受け取るしかないので、地面の感じが分かることと、ぐらつかないことの2つだけは、どんなに良いと言われるシューズでもゆずれません。


基準③④⑤:重さ、長持ち、かかとのフィット

残りの3つです。

基準③:重さは、「軽すぎない」が正解。

「軽いシューズは速い」と思われがちです。でも、僕には当てはまりません。

ある程度の重さがあるほうが、着地のときに安定します。足から伝わる情報も増えます。

僕が気持ちよく走れるのは、片足280〜320グラムくらい。これより軽いと、足元が頼りなく感じます。

基準④:長持ちするか。

僕は路面を目で確かめられないので、気づかないうちに、同じ場所ばかりすり減らしていることがあります。

これを確かめて、500キロ以上はけるものを選んでいます。

基準⑤:かかとのフィット。

かかとが浮く。横幅がきつい。つま先が当たる。

こういう小さな違和感が、僕の場合、そのまま転ぶ危険につながります。

数字はあくまで僕の足と走り方に合った目安なので、そのまままねをするというよりも、「自分の足は、どのくらいの厚さと重さだと安心するのか」を探すときの手がかりとして読んでください。


ネットで買って失敗し、店で伝えてうまくいった

失敗は、もうひとつあります。

「クッション性ばつぐん」

このレビューを信じて、ネットで買いました。

届いたシューズは、たしかにクッションがありました。

ありすぎました。

地面の感じがにぶくて、足の裏に何も伝わってきません。

それ以来、必ず試しばきをしてから買う、と決めています。

うまくいった話も、書いておきます。

あるスポーツ用品店で、正直に伝えました。

「視覚障害があるので、地面の感じと、安定を大事にしたいです」

店員さんは、驚いていました。

でも、僕の足を測ってくれました。走り方を見てくれました。そして、3足にしぼって持ってきてくれました。

そのうちの1足が、今も使っているシューズです。

「見えにくい」と先に伝えただけで、店員さんは僕の目のかわりになってくれて、ひとりで悩んでいたときにはたどり着けなかった1足に、あっさりと出会うことができました。


店での頼み方と、試しばきの確かめ方

だから、見えにくい人こそ、店で試しばきをしてほしいです。

僕がやっていることです。

店員さんには、3つのことを伝えます。

試しばきでは、これを確かめます。

試しばきは、買う前のセーブです。

つまり、買ってから「合わなかった」と後悔しないように、先に足で確かめておく、ということです。

店の中を何度も歩き、少し走る動きもして、この全部に足の裏が「大丈夫」と答えてくれたシューズだけを、僕は買うことにしています。


シューズと同じくらい大事な、走る場所

シューズと同じくらい大事なのが、走る場所です。

僕は少し見えるので、公園を走ります。

路面が整っているところ。人が少ない時間。それを選びます。

ガイドと走るときは、ロープでつながります。

僕が右手、ガイドが左手でロープを持って、横にならんで走ります。

雨の日や、見えにくい日は、ジムのトレッドミルを使います。

速さと傾きを決めておけるので、安定した中で走る力をきたえられます。

どんなに良いシューズをはいても、足元が読めない場所ではこわさが先に立ってしまうので、僕は「安心して足を出せる場所」を先に決めてから、その日の練習を始めるようにしています。


見えにくくても、走りたいあなたへ

最後に、もう一度まとめます。

そして、店で試しばきをして、店員さんに正直に伝えること。

シューズが見えないことは、ゲームオーバーではありません。

つまり、目で選べなくても、足の裏で選べば、自分に合う1足は見つかる、ということです。

僕は、見えにくい目のまま、IRONMANという226キロのレースを、2024年、2025年、2026年と3回完走しました。

「見えないから選べない」のではなく、「見えないからこそ、足の裏が教えてくれる」と信じて、ガイドや店員さんの力を借りながら、僕は今日も走り続けています。

一歩ずつ、前へ。


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2026年9月13日、IRONMAN JAPANを完走しました(14時間43分54秒・PCクラス2位)。この挑戦は、支えてくれる人たちと一緒に作る物語です。次の挑戦も、日々の練習やレースの様子を発信していくので、そばで見届けてもらえたら嬉しいです。

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