← 記事一覧に戻る
📅 2026.06.05(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
🎤 講演

小学校講演レポート(2026年6月)|4年生に「ほめてから、直すところを伝える」を教わった日

⏱ 約4分で読めます(2,653字)
ガイドとタンデム自転車で疾走する中澤隆

人に「ここは直したほうがいいよ」と伝える。

これ、むずかしくないですか。

言い方をまちがえると、空気がこおります。だまっていると、何も変わりません。

大人になっても、なかなかうまくできません。

ところが先日、それをさらっとやってのける人たちに会いました。

小学校の、4年生です。

もしあなたが、子どもたちに何かを伝える仕事をしているなら。

もしあなたが、相手を否定せずに直してほしいところを伝える方法を、探しているなら。

この記事は、あなたに向けて書いています。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。

講演を始めて、9年になります。ここ3〜4年は、年に50回前後、学校などでお話をしています。

今日は、2026年6月5日に行った、小学校での講演のレポートです。

📖 この記事の目次
  1. 2026年度、2回目の講演
  2. 最初の10秒で、空気が分かった
  3. 4年生の発表に、驚いた
  4. 大人でも、むずかしいこと
  5. 賢さは、年齢じゃない
  6. 教える側のはずが、教わる側になった
  7. 写真を、撮り忘れました
  8. 「子どもには分からない」と思っているあなたへ

2026年度、2回目の講演

2026年6月5日。ある小学校に、講演に行きました。

聞いてくれるのは、4年生のみなさんです。

これが、2026年度の2回目の講演でした。

今年度は、ゆっくりめのスタートでした。6月に入って、やっと動き出した感じがあります。

僕にとって、初めての場所での講演は、移動もふくめて1日がかりの仕事です。

どの電車に乗るか。どこで乗りかえるか。会場までどう行くか。話す前に、まずそこからです。

この日も、シュクレと一緒に、最寄りの駅から会場へ向かいました。

スタッフさんが迎えてくれて、ぶじに会場に入りました。話しはじめる前に、まずここまでたどり着くことが、見えにくい僕にとっては、その日の最初の大事な仕事です。


最初の10秒で、空気が分かった

話しはじめて、すぐに分かりました。

今日は、空気が違う。

僕が話すと、4年生のみなさんは、じっと耳をかたむけてくれます。

笑うところでは、思いきり笑ってくれます。

シュクレが登場すると、会場全体が、ふわっとあたたかくなりました。

僕には、子どもたちの顔が、はっきりとは見えません。

僕は、世界を音で感じています。

だから、会場の様子も、音で分かります。静かさの深さ。笑い声の大きさ。

講演を9年続けてきて、空気が違う日があることを、僕は知っています。

最初の10秒で伝わってきた集中の深さから、今日はまちがいなくその「違う日」だと、見えにくい僕にも、はっきり分かりました。


4年生の発表に、驚いた

講演の後半に、4年生のみなさんが発表する時間がありました。

そこで、僕は驚きました。

ある子が、別の子の発表を聞いたあと、こう言ったのです。

「○○さんの〜のところ、とても良かったと思います」

まず、ほめる。

「でも、ここを△△にしたら、もっと良くなると思います」

それから、直すところを伝える。

これを、4年生が、ごく自然にやっていました。

誰かに言わされている感じは、ありません。

否定だけでもない。ほめるだけでもない。

相手の良いところをちゃんと認めてから、もっと良くなる方向を一緒に考えるというやり方を、目の前の4年生が、当たり前のように使っていました。


大人でも、むずかしいこと

これは、大人でもむずかしいことです。

直してほしいことを伝えるのは、多くの大人にとってラスボスです。

つまり、いちばんむずかしくて、できれば避けて通りたいこと、ということです。

会議で。部下に。自分の子どもに。

これができている大人は、どれくらいいるでしょうか。

……書きながら、自分の胸にも手を当てています。

ほめるのを忘れて、直すところだけ言ってしまう。

逆に、言いにくくて、ほめるだけで終わってしまう。

どちらも、よくあることです。

4年生の声を聞きながら、顔がはっきり見えなくても、声の調子、言葉のえらび方、間の取り方だけで、その子の賢さはちゃんと伝わってくるのだと、僕は自分の耳でたしかめていました。


賢さは、年齢じゃない

この日の4年生は、本当に賢かったです。

どれも、目ではなく、耳で受け取ったものです。

賢さは、年齢じゃない。

「4年生だから、このくらいだろう」と、どこかで決めつけていた自分に気づいて、その当たり前を疑うことが、この日の僕にとっての1ミリの行動になりました。


教える側のはずが、教わる側になった

会場で、僕は「教える側」のはずでした。

見えにくい中でIRONMANに挑む話を、4年生に届ける。それが、この日の役目です。

でも、発表を聞いているうちに、僕は「教わる側」になっていました。

講演を9年続けても、僕はまだレベル1でした。

つまり、伝える側のつもりでいても、教わることがまだたくさんある、ということです。

「まずほめて、それから直すところを伝える」

この言葉づかいは、僕も次の講演から使おう、と思いました。

9年間、僕は自分を「伝える側」だと思ってきたけれど、本当は毎回どこかで何かを教わっていて、この日は、それが特にはっきり見えた一日でした。


写真を、撮り忘れました

正直に書きます。

この日、僕は写真を撮り忘れました。

1枚も、ありません。

今日の講演は、セーブし忘れです。

つまり、形に残る記録が、何もない、ということです。

スタッフさんとの打ち合わせ。4年生との時間。シュクレの世話。

目の前のことに集中していて、気がついたら、帰り道でした。

でも、写真がなくても、残ったものがあります。

講演は、僕にとって、お金をいただく仕事です。

でも、教える側として出かけていって、帰りには教わる側になっているという時間を、月に何度ももらえることのほうが、僕にとってはずっと大きな宝物です。


「子どもには分からない」と思っているあなたへ

もしあなたが、「子どもには、子どもの話し方しか分からない」と思っているなら。

それは、違うかもしれません。

4年生でも、「相手をほめて、直すところを伝える」ことができます。

そして、僕たち大人も、4年生から学べます。

学ぼうとする気持ちがあれば、誰からでも、何歳からでも、学べます。

明日、誰かに何かを伝えるとき、まず良かったところをひとつ言ってから、「ここをこうしたら、もっと良くなる」と続けてみる。それだけで、相手に届く言葉は、きっと変わります。

4年生のみなさん、ありがとうございました。

僕のほうが、たくさん教わりました。


🎤 講演のご依頼・お問い合わせ

「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「障害理解」をテーマに、講演を続けています。小学校・中学校・高校・大学・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

📧 つなひろワールドへお問い合わせ

最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

📷 Instagramをフォロー ▶️ YouTubeを見る

新しい記事が出たら、メールでお知らせします。すぐ下のフォームから登録できます ↓

動画でも見られます:僕の人生を16分で

緑内障の診断からIRONMAN完走までを、16分の動画にまとめました。

▶ YouTubeで見る


💬コメント

RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人