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📅 2026.08.19(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
🌱 視覚障害

盲導犬を触ってもいいですか|盲導犬ユーザーの僕が、本音で答えます

⏱ 約6分で読めます(3,311字)

「わんちゃん、なでていい?」。きらきらした声で聞かれて、「ごめんね」と答えるとき、僕の胸は少しだけ痛みます。

もしあなたが、声をかけたいのに、「迷惑かな」と思ってやめたことがあるなら。

もしあなたが、やさしくしたつもりが断られて、少ししょんぼりしたことがあるなら。

もしあなたが、盲導犬と歩く人を見かけて、どうすればいいか迷ったことがあるなら。

この記事は、あなたのためのものです。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。

街でよく聞かれる質問があります。「盲導犬を、触ってもいいですか?」

先に答えを書きます。原則は、「今は、触らないでください」です。

でも、冷たくしたいわけではありません。今日は、その理由を、本音で書きます。

📖 この記事の目次
  1. 「触ってもいいですか?」と聞かれたとき
  2. 先に伝えたい。その気持ちは、うれしい
  3. 仕事中は、声をかけない・触らない
  4. 冷たいのではなく、安全のため
  5. 街で見かけたら、できる3つのこと
  6. やさしさは、ちゃんと届いています
  7. あなたへ

「触ってもいいですか?」と聞かれたとき

街を歩いていると、ときどき声をかけていただきます。

「かわいいワンちゃんですね」「盲導犬ですか?」「触ってもいいですか?」

声をかけてくださる方の声は、たいてい、とてもやさしいです。悪気なんて、これっぽっちもありません。

シュクレは人なつっこくて、愛らしい顔をしています。声をかけたくなる気持ちは、よく分かります。

一緒に暮らしている僕でさえ、毎日「かわいいなあ」と思っているのですから。

……飼い主バカです。分かっています。

それでも、答えは「ごめんなさい、今は触らないでください」です。

そうお伝えすると、少しさみしそうにされる方もいます。

とくに子どもたち。「わんちゃん、なでていい?」と聞いてくれた子に、「ごめんね、今はお仕事中だから」と答えるのは、正直、胸が痛みます。

だから僕は、「ダメ」だけで終わらせず、どうしてダメなのかを、できるだけやさしく伝えるようにしていて、「そっか、お仕事中なんだね」と分かってくれた子が、そのあとシュクレをそっと見守ってくれる瞬間が、とても好きです。


先に伝えたい。その気持ちは、うれしい

理由の前に、どうしても先に伝えたいことがあります。

声をかけてくださる、その気持ちが、本当にうれしい、ということです。

シュクレを「かわいい」と思ってくださること。

僕たちに関心を持ってくださること。

勇気を出して、声をかけてくださること。

どれも、僕にとっては、ありがたいことです。

だから、これから書く「触らないでほしい」は、あなたのやさしさを否定するためのものではありません。

断るのは心苦しいけれど、その気持ちは間違いなく僕の心に届いているので、せっかくのやさしさがすれ違いのまま終わってしまわないように、こうして文章にしています。


仕事中は、声をかけない・触らない

盲導犬と接するときの、大事な原則があります。

ハーネスをつけているあいだは、こうしてください。

ハーネスをつけている時間は、盲導犬が集中して仕事をしている時間です。僕を安全に導くために、まわりに気を配ってくれています。

人でいえば、車を運転しているときに近いかもしれません。運転中に急に肩をたたかれたら、ひやっとしますよね。

外から声をかけられたり、なでられたりすると、シュクレの集中が、ふっと切れます。

すると、段差や障害物への反応が、一瞬おくれることがあります。

その一瞬が、僕にとっては、転ぶことや事故につながりかねません。

これは、シュクレが悪いのでも、声をかけた人が悪いのでもありません。知らなければ、つい声をかけてしまいます。

盲導犬は、いろいろなことをがまんできるように訓練されています。でも、犬です。心があります。

大好きな食べ物を目の前に出されたり、やさしく名前を呼ばれたりすれば、気を引かれて当たり前で、それでもぐっとこらえて僕を導くことに集中してくれているのだと思うと、僕はシュクレに、よけいながまんをさせたくないのです。


冷たいのではなく、安全のため

ここが、いちばん伝えたいところです。

僕が「触らないでください」とお願いするのは、冷たいからではありません。

シュクレと、僕の安全を守るためです。

シュクレは、僕の目の代わりになって、一緒に歩いてくれる相棒です。シュクレが集中できるかどうかは、そのまま、僕の安全につながっています。

外を歩く僕のHPは、シュクレの集中に守られています。

つまり、シュクレが集中できなくなると、僕はすぐにケガをするかもしれない、ということです。

もし、声をかけたことでシュクレの集中が切れて、僕が転んでしまったら。声をかけてくださったあなたも、きっと心を痛めます。

そんな悲しいことには、したくありません。だから、前もってお願いしています。

「冷たい人だな」ではなく、「ああ、今はお仕事中なんだな」と思っていただけたら、それだけで、僕はとてもうれしいです。

講演でこの話をすると、終わったあとに「知らなかった。今まで声をかけてしまっていたかもしれない」と話しかけてくださる方がいます。

それでいいんです。知らなかったことは、誰のせいでもありません。

断ったその先で理由を伝えて、分かってもらえたなら、それはひとつのあたたかい出会いになるので、僕は断ることを、悪いことだとは思っていません。


街で見かけたら、できる3つのこと

では、盲導犬と歩く人を見かけたら、どうすればいいのでしょうか。

いちばんのやさしさは、そっと見守ることです。それだけで、十分すぎます。

もしユーザーが困っているようだったら、「何かお手伝いしましょうか?」と、人のほうに声をかけてください。その一言は、とてもありがたいです。

そして、どうしてもシュクレに触れたいと思ってくださったら、まず僕に聞いてください。

ハーネスを外して休んでいるときなど、「どうぞ」と答えられることもあります。大事なのは、タイミングと、一声です。

誤解しないでほしいのは、「声をかけないでください」と言いたいのではない、ということです。

むしろ、もっと声をかけてほしい。ただ、相手を、お仕事中の犬ではなく、僕にしてほしい。それだけです。

……シュクレより僕に、というのは、人気の面では無理なお願いかもしれませんが。

電車で席をゆずってくださる方、エレベーターのボタンを押してくださる方、道に迷っているときに声をかけてくださる方がいて、そのひとつひとつの小さなやさしさが、僕とシュクレの毎日を、ずっと歩きやすくしてくれています。


やさしさは、ちゃんと届いています

この記事でいちばん伝えたかったのは、これです。

あなたのやさしさは、「触らないでください」とお断りしたときでも、ちゃんと僕たちに届いています。

盲導犬ユーザーは、声をかけられて迷惑だなんて、思っていません。気にかけてもらえることが、うれしいのです。

ルールは、冷たさのためにあるのではありません。みんなが安心して、気持ちよく出会うためにあります。

正しい接し方を知っている人がひとり増えるたびに、街は盲導犬とユーザーにとって少しずつ歩きやすくなり、それはめぐりめぐって、まだ会ったことのない誰かの盲導犬とユーザーを守ることにもなります。


あなたへ

もしあなたが、これまで盲導犬と歩く人を見て、「どうしたらいいんだろう」と迷っていたなら。

もう、大丈夫です。

お仕事中は、そっと見守る。困っていそうなら、人に声をかける。触れたいときは、まず一声。

たった、これだけです。

もし街で僕とシュクレを見かけたら、心の中で「いってらっしゃい」と思ってもらえたら、うれしいです。

そしてこれは、盲導犬だけの話ではないと思っています。

目の見えない人、車いすの人、いろいろな事情のある人。みんなにとってやさしい街は、こういう小さな「知っている」から始まります。

やさしさを、のみこまないでください。届け方さえ知っていれば、あなたのその気持ちは、かならず誰かの安心になります。

見えなくなっていく世界の中で、支えられながら挑み続ける。その旅を、仲間と一緒に。

今日、ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人