練習ではうまくいったのに、本番でだけ、うまくいかない。そんな経験はありませんか。
もしあなたが、長いレースの補給に、何を選べばいいのか迷っているなら。
もしあなたが、レースの途中で、急に何も飲めなくなったことがあるなら。
もしあなたが、種類が多すぎて、どのジェルを買えばいいのか決められずにいるなら。
この記事は、あなたに向けて書きました。
僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害B2クラスのパラトライアスリートで、盲導犬のシュクレと暮らしています。IRONMAN(226キロのトライアスロン)を、2024年、2025年、2026年と完走しました。
今日は、2024年の本番で「甘すぎてまったく飲めなかった」失敗と、2025年にたどり着いた自作レシピの話を書きます。おすすめ10選のような記事ではありません。僕が本番で実際にやったことです。
先に、いちばん大事なことを書きます。
練習で大丈夫だった補給が、本番では飲めなくなることがあります。
これが、IRONMANの本当にこわいところです。
「練習で試して、本番でも同じものを使いましょう」
よく、そう言われます。半分は、正解です。
でも、本番には、練習にないものがかかってきます。
高い気温。長い時間。緊張。内臓の疲れ。
これが重なると、体が補給を全部ことわってきます。
……練習では、あんなに素直に飲んでくれたのに、です。
僕は2024年に、まさにこれをやってしまって、その失敗があったからこそ、次の年のやり方を一から考え直すことになりました。
当日。スイム3.8キロを泳いで、バイクに乗りました。
ボトルに口をつけた瞬間です。
「うっ……」
練習では平気だったドリンクが、異常に甘い。
のどが受けつけません。口の中がベタつきます。
補給は、レース中の回復です。
つまり、減っていくエネルギーを、走りながら足し続けること、ということです。
それが、できなくなりました。
飲まなきゃ足りない。頭では分かっています。でも、体がことわります。
結局、バイクの180キロを、水とジェルだけでしのぎました。
13時間14分17秒で完走はできました。でも、後半は失速しました。
ゴールしてすぐ、「補給のやり方がまちがっていた」と分かりました。
学んだことは、3つです。
何か月もかけて練習で確かめてきたはずのやり方が、本番のたったひと口でくずれてしまうことがあるのだと、僕はこの日、バイクの上で初めて体で知りました。
2025年は、やり方を変えました。
甘すぎない。でも、エネルギーはとれる。そういう自作レシピです。
今のところ、これが僕の正解です。
何がよかったか。
本番で、「もうひと口飲みたい」と思える味になったことです。
にがりが、甘さを引きしめてくれます。長い時間飲み続けても、口の中がベタつきません。
バイクの180キロを、このボトルからの補給だけで乗りきれました。
結果は、15時間08分45秒で完走。PCクラス2位です。
タイムは、2024年より落ちました。
……レシピを変えて遅くなったのか、と思われそうですが、これは別の理由です。
補給だけを見れば、口をつけるたびに体にことわられていた2024年とはまるで違って、最後までちゃんと飲み続けられた2025年のほうが、はっきりうまくいきました。
本番だけが特別なのではありません。毎日の練習でも、補給は大事です。
僕がふだん使っているのは、シンプルな4つです。
練習中のメインのドリンクです。ふつうのポカリより甘さがひかえめで、長い練習でも飲みあきません。レモンのさわやかさが、夏の朝の練習に合います。
Amazonで見る →※ 中澤の評価:「コスパ最高、味最高」
本番でも練習でも使う、糖質補給の主役です。1袋でしっかりカロリーがとれます。ただ、正直な感想は「甘すぎて、きらい」。だから本番では、そのまま飲まずに、水とにがりで薄めて使っています。
Amazonで見る →※ 中澤の評価:「甘すぎて嫌い。だから薄める」
ここぞという場面で使う、カフェイン入りのジェルです。バイクの終わりごろや、ランの後半。集中力が落ちてきたときに効きます。眠気ざましではなく、「もうひとふんばり」のために使います。
Amazonで見る →※ 中澤の評価:「カフェインが効く瞬間に使う」
2025年の自作レシピで使った、かくし味です。甘さを引きしめて、口あたりをよくしてくれます。ミネラルもとれます。スーパーで買える食品用のもので十分です。
Amazonで見る →※ 中澤の評価:「甘さをやわらげる、かくし味」
……主役のジェルを「きらい」と書くのもどうかと思いますが、本当のことです。
きらいな味でも、薄め方しだいで本番の味方になってくれるのですから、「自分の体が何をことわるのか」を知っておくことが、道具そのものを選ぶのと同じくらい大事なのだと思います。
長いレースには、もうひとつ問題があります。
味に、あきるんです。
同じ味のジェルを、5時間続けて飲む。すると、必ず口がことわってきます。
だから僕は、わざと味を使い分けています。
レースの途中で、「次は違う味にしよう」と思える状態を、先に作っておきます。
これは、レースの直前にコンビニで思いつきで買うものではありません。
練習のうちからいくつもの味を試しておいて、疲れているときの自分の体が、どの味なら受け入れてくれて、どの味はことわるのかを、先に知っておくことが大事です。
僕にとって、レース中にジェルの袋を開けるのは、思っている以上に大変な作業です。
バイクに乗りながら、見えにくい指先で、ちょうどいい場所をつまむ。ちょうどいい力で、やぶる。
……書くとかんたんですが、走りながらだと、これがなかなか開きません。
だから、レースの前の夜に、全部のジェルの切り口をハサミで切っておきます。
切りはなすのではありません。「あとは引っぱれば開く」ところまでにしておきます。
これは、見えにくい人だけの工夫ではないと思います。
緊張して、疲れて、余裕がなくなっていく本番の中で、手もとの作業がたったひとつ減るだけで、気持ちのゆとりがまるで違ってくるからです。
最後に、あなたが自分の補給のやり方を作るための、3つのステップです。
暑い日。長い時間。疲れた状態。
本番よりきつい条件で試して、それでも飲めるものを選びます。
練習で「ぎりぎり大丈夫」なものは、本番では体にことわられます。
メインの補給がだめだったときのために、味の違うものを必ず持ってレースに出ます。
僕にとって、これはセーブです。
つまり、うまくいかなかったときに、そこからやり直せる場所を先に作っておく、ということです。
僕は今、いつも3〜4種類の味を使い分けています。
僕の「モルテン160を10本+水+にがり」は、レースの2か月前から、練習で何度も試して作ったレシピです。
レースの直前に思いついたやり方は、ほとんどうまくいきません。
2024年にバイクの上で「うっ……」となったあの瞬間があったから、僕は自分の体が受け入れてくれる味を本気で探すようになったので、あなたにも、早めに、あなたの体に合う答えを見つけてほしいと思っています。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
視覚障害B2のパラトライアスリート・中澤隆が、学校・企業・自治体向けに講演を続けています。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。
📧 つなひろワールドへお問い合わせ2026年9月13日、IRONMAN JAPANを完走しました(14時間43分54秒・PCクラス2位)。この挑戦は、支えてくれる人たちと一緒に作る物語です。次の挑戦も、日々の練習やレースの様子を発信していくので、そばで見届けてもらえたら嬉しいです。
中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。
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