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📅 2026.06.29(更新 2026.10.10) | RYU NAKAZAWA
🌱 視覚障害

障害者差別を感じたことはありますか|視覚障害B2の僕が、先生の質問に正直に答えます

⏱ 約6分で読めます(3,567字)
ジムで筋力トレーニングする中澤隆

よかれと思ってしたことが、相手のためになっていたのか。あとから不安になったこと、ありませんか。

もしあなたが、困っていそうな人に声をかけようとして、やめたことがあるなら。

もしあなたが、障害のある人とどう接したらいいか、分からないと感じているなら。

もしあなたが、「差別」という言葉の重さに、つい身がまえてしまうなら。

この記事は、あなたのためのものです。

僕は中澤隆(なかざわ りゅう)です。視覚障害のB2というクラスで、パラトライアスロンをしています。盲導犬のシュクレと暮らしています。

ある中学校での講演のあと、ひとりの先生に、こう聞かれました。

「中澤さんは、これまでに障害者差別を感じたことはありますか?」

今日は、その答えを書きます。誰かを責める話ではありません。

📖 この記事の目次
  1. 先生が、まっすぐ聞いてくれた
  2. 悪意のある差別より、悪意のない無関心
  3. いちばんつらいのは、「無理でしょう」
  4. 「区別」と「配慮」は、ちがう
  5. 「やってあげる」より、「一緒にやろう」
  6. 助けてもらうことは、弱さじゃない
  7. 今は、言葉にできる
  8. あなたへ

先生が、まっすぐ聞いてくれた

その日、僕はシュクレと一緒に会場に入って、子どもたちの前で、僕の人生の話をしました。

はじめての場所での講演は、移動の段取りもふくめて、1日がかりの仕事です。

講演のあと、何人かの先生が質問をしてくださいました。その中のひとつが、さっきの質問です。

勇気のいる質問だと思いました。

聞きにくいことを、正面から聞いてくれた。

こういう質問は、聞く側にとってラスボスだと思います。

つまり、いちばん聞きにくくて、できれば避けて通りたい質問、ということです。

それをまっすぐ聞いてもらえたのだから、僕のほうも、きれいな言葉でごまかさずに、ふだん感じていることをそのまま答えたいと思いました。


悪意のある差別より、悪意のない無関心

正直に言います。

「お前は障害者だからダメだ」。そうはっきり言われて傷ついた、という分かりやすい差別を、僕はあまり経験していません。

僕が毎日感じているのは、もっと静かなものです。

この2つのほうが、ずっと身近にあります。

たとえば、電車の中。シュクレと立っていると、誰も声をかけてこない時間があります。

みんな、悪い人ではありません。どう関わっていいか分からなくて、そっとしておいてくれているのです。

でも、見えにくい側からすると、「ここには、気にかけてくれる人はいないのかな」と、少し心細くなります。

その逆もあります。急に肩をつかまれて、席へ連れていかれそうになる。今度は、びっくりして体が固まります。

……ちょうどいいのがむずかしい。わがままで、すみません。

無関心は「関わらないでおこう」という遠慮から、気づかいすぎは「助けてあげなきゃ」という優しさから生まれていて、どちらも出発点は悪意ではないので、僕は誰かを責める気持ちにはなれません。

差別は、「事件」というより、「すれ違い」で起きているのだと思います。


いちばんつらいのは、「無理でしょう」

では、僕がいちばんつらいのは、どんなときか。

まだ何も試していないのに、「あなたには無理でしょう」と決めつけられるときです。

27歳のとき、現場監督の仕事中に、天井の照明が虹色に見えました。緑内障でした。

治療をしても進んで、31歳で視覚障害者になりました。13年勤めた会社も、離れることになりました。

図面を見る仕事なのに、図面が見えなくなっていく。

あのころ、「もう自分にはできることがない」といちばん強く思いこんでいたのは、僕自身でした。

僕は自分で、自分にゲームオーバーを出していました。

つまり、まだ何も試していないのに、もう終わりだと自分で決めていた、ということです。

でも、ちがいました。

25メートルも泳げなかった僕が、泳げるようになりました。1キロ走るだけで膝が痛くなっていた僕が、ガイドと一緒にフルマラソンを走れるようになりました。

「できない」と思われていたことの多くは、「やり方を知らなかっただけ」でした。

だから、試す前から「これは無理だよね」と線を引かれると、いちばんもどかしくて、開ける前の扉を閉じられることは、ひどい言葉よりも静かに、人の心をけずっていくのだと思います。


「区別」と「配慮」は、ちがう

僕が大事にしている線引きがあります。「区別」と「配慮」はちがう、ということです。

レースのスイムでは、ガイドがロープでつながってくれます。バイクは二人乗りのタンデムで、前に乗るガイドが視界を引き受けてくれます。

これは「配慮」です。僕ができる形に、やり方を変えてくれている。だから僕は、力を出しきれます。

一方で、「障害者だから、こっちのかんたんなほうでいいよね」と、本人に聞かずに役割を取り上げてしまう。

これは、配慮のようでいて、「区別」になっていることがあります。

見た目は、よく似ています。ちがいは、ひとつだけ。本人に聞いたかどうかです。

ロープの長さも、合図の出し方も、僕とガイドで何度も話し合って決めています。「こうしてあげる」ではなく、僕が「こうしてほしい」を伝えて、ガイドがこたえてくれます。

配慮はいくらでもありがたく受け取るけれど、区別は優しさの形をしていてもやっぱりさみしくて、その差は「どうしたい?」と一言聞いてもらえるかどうかという、ほんの小さなところにあります。


「やってあげる」より、「一緒にやろう」

もうひとつ、正直に書きます。優しさが強すぎると、こちらの出番がなくなることがあります。

「危ないから、ここにいて」「無理しなくていいから、座っていて」。

心配してくれる気持ちは、痛いほど分かります。

でも、試す前に全部を引き受けられてしまうと、「自分には、できることが何もない」と感じてしまいます。

僕がいちばんうれしいのは、「一緒にやろう」と言ってもらえるときです。

できないところだけ、手を貸してくれる。できるところは、任せてくれる。その線を、僕と一緒に探してくれる。

だから、まず聞いてほしいのです。「どこを手伝おうか?」

スポーツを通して、「助けてもらうこと」と「全部やってもらうこと」はまったく別のものだと知りました。前のほうは対等なチームワークで、あとのほうは、知らないうちに相手の出番を消してしまいます。


助けてもらうことは、弱さじゃない

こう書くと、「じゃあ、気軽に助けちゃいけないのか」と思わせてしまうかもしれません。逆です。

僕は、助けてもらうことを、弱さだとは思っていません。

昔は、思っていました。助けてもらう側になるのが、情けなくて、くやしかった。ガイドと組みはじめたころも、「助けてもらってばかりの自分」がいやでした。

でも、競技を続けるうちに、気づきました。

ガイドと僕は、助ける人と助けられる人ではありません。同じゴールを目指す、対等なチームです。上下ではなく、横の関係です。

だから、街で困っている人を見かけたら、迷わず声をかけてください。「何かお手伝いしましょうか」。

相手が「大丈夫です」と言ったら、気持ちよく引けばいい。

聞いてくれたこと自体がもう十分にうれしくて、それは差別でも気づかいすぎでもなく、人と人が一緒に方法を探すという、ただそれだけのことなのです。


今は、言葉にできる

僕がこの質問に正直に答えられるのは、たくさんの人に支えられて、今ここにいるからです。

見えなくなっていく時期、僕は誰にも本音を言えませんでした。くやしくて、情けなくて、自分の中に抱えこんでいました。

でも、テレビで、全盲の女の子がトライアスロンをしている姿を見ました。そこから動きだすと、まわりに少しずつ、仲間が増えていきました。

ガイド。コーチ。講演で出会う人たち。そして、シュクレ。

あのころつらかったことや、決めつけられてくやしかったことを、こうして過去の話として言葉にできるのは、気づけば僕が、つながりの輪の中にいたからです。


あなたへ

もしあなたが、「障害のある人と、どう接していいか分からない」と感じているなら。

かまえなくて、大丈夫です。完ぺきに正しい接し方は、探さなくていい。

それだけで、区別は配慮に変わります。

そして、もしあなた自身が、何かを「できない」と決めつけられて、もどかしい思いをしているなら。僕は、あなたの側に立ちたいです。

試す前に閉じられた扉は、自分の手で、もう一度開けていい。僕も、そうやって泳ぎだしました。

質問をしてくださった先生へ。聞きにくいことを、まっすぐ聞いてくれて、ありがとうございました。

あなたのその一歩こそが、無関心とは正反対の、いちばん優しい関わり方だと、僕は思っています。

見えなくなっていく世界の中で、支えられながら挑み続ける。その旅を、仲間と一緒に。


🌱 おなじ不安の中にいるあなたへ

僕が視覚障害になってから今日までの道のりを、16分の動画にまとめています。文章より、声のほうが届く日もあると思うから。よかったら、そばに置いておいてください。

▶️ 動画「目が見えないのに、226km。」 📖 27歳で緑内障と診断された日|およそ20年後の僕から、過去の自分に届けたい言葉

最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人